はじめに
こんにちは、臨床心理士のRyuです。
本日は『カウンセリング』についてお話ししたいと思います。
カウンセリングといっても、具体的に何を指すのか、どんなメリットがあるのか、詳しく分からない方がほとんどだと思います。一方で、きちんと活用することが出来れば、そのメリットは非常に大きなものがあります。
常々思っているのですが、日本には「苦しくても愚痴らずに、歯を食いしばって耐える」ことを美徳とする文化があるように思います。一方、欧米で働いていた友人から「向こうでは企業の社員一人ひとりに担当カウンセラーがおり、当たり前の権利として相談の機会が提供されている」と教えてもらったことがあります。先日観ていた映画でも、作品内のある事件の直後に「カウンセラーに相談したい人はどうぞ」というセリフがあり、「文化の違いだなあ…」としみじみ感じました。
カウンセリングというのは、自分と真摯に向き合う場であり、カウンセラーと共同で行う人生学習の場とも捉えられます。みなさんに、少しでもカウンセリングを身近に感じてもらえたらと思い、この記事を作成いたしました。
カウンセリングとは何か
(1)定義
「適応上の問題を理解し、解決することができるように、他の人がその援助につとめるというような関係」――English, H.B.ほか. 2005. 心理学辞典. 有斐閣
広義の意味では『美容カウンセリング』といった一般的なやりとりも含みますが、狭義の意味では、専門家が心理学的な知識・技法を用いて相談者を援助することを言います。もともとは教育領域で発展した概念で、様々な知見を用いて相談者を総合的に援助するものとされていました。これは、『精神分析・認知行動療法・来談者中心療法』などの技法で知られる『心理療法』とは区別されるものです。しかし日本ではこれらが混在しており、カウンセラーは「使えるものは使ってしまおう!」と、様々な技法からいいとこどりをしながら援助活動を行っているため、あまり明確に区別されていません。
カウンセリングは主に、一対一での言葉のやりとり(言語外のやりとりも重要ですが)で進められます。まだ言葉を十分に扱えないお子さま等のためには、言葉ではなく”動作”を扱う『プレイセラピー』を行うこともあります。
Column:アドバイスはもらえない?
よくある心理士への要望に、「アドバイスが欲しい」というものがあります。カウンセリングにおいて、カウンセラーがアドバイスをすることは稀です。相談者が “自分で考えて決める” ことに意味があると考えるためです。一方、子育てに関する悩みなど、相談者が第三者に関して相談する場合は、カウンセラーが一緒に考え、情報提供をすることもあります。これをコンサルテーションや心理教育といいます。
どんな相談を聞いてくれるの?
カウンセリングではどんな内容でも話すことが出来ます。知識ではなく、相談者の気持ちや考えを主に扱いますので、テーマとしては何でも構わないのです。私が学生の頃に聞いた話ですが、あるカウンセラーが初学者の頃、どこかの企業の社長さんが相談に来たそうです。社長さんが「経営の経験もない人間に何がわかるのか」と問いかけたところ、カウンセラーは「うれしい、つらい、といった気持ちには共感できる」と話し、実際にカウンセリングがうまく進んだそうです。
相談者本人が「大したことない」「こんなこと話しても意味がないかな」と思うことでも、実は深い部分で悩みと繋がっていることもありますので、遠慮せずに話してみてください。
大事なのは、相談者自身がそれを “話したいか”、“話してもいいと思っているか” です。
相談すると、どんないいことがあるの?
せっかくお金と時間を使い相談するのですから、そのメリットは知っておきたいですよね。私は、大きく分けて3つのメリットがあると考えています。
(1)気持ちが楽になる
困りごとを自分だけで抱えておくのはつらいことです。それを誰かに話すことで、気持ちが楽になることもあります。私の先生がよく、「話すは “はなす” 」という言葉を使って説明してくれました。話すことで、悩みを手放すことが出来る。そして自分と離して(距離を置いて)考えることで、冷静に悩みを眺めて考えられる、という意味だそうです。
(2)精神的な安定につながる
定期的に話を聞いてもらうことで気持ちをメンテナンス出来、そんな人がいるという事実が精神的な安定をもたらします。社会人になると思うことですが、職場は常にストレスと隣り合わせで、精神的な安定を欠けば、業務に集中できなかったり、対人関係で不和が生じたりします。家庭であれば、夫婦や親子間でのちょっとしたいさかいに発展することもあるでしょう。会社や学校で「この人素敵だな」と思う人は、精神的に安定している方が多いのではないでしょうか。
(3)成長できる
カウンセリングは、「成長モデル」という枠組みで行われ、相談者が困りごとと向き合うことで、それを乗り越えられる人格へと成長することを目指します。ですから、カウンセリングを通して自分と向き合うことで、人間的に成熟していくことが出来るのです。
(4)困りごとを解決できる
最後に、これがみなさんにとっては一番大きなメリットかもしれません。相談者は、基本的に何かに困っている場合が多いですから、それが解決するのは嬉しいメリットですよね。ただ、ここで言う「解決」には少し含みがあります。
例えば、「子どもが言うことを聞かないのでどうしたら言うことを聞かせられるか」という困りごとがあったとします。ここで言う ”解決” とは何を指すのでしょうか。言葉だけを見れば「子どもが言うことを聞くような叱り方の技術を身に着けること」かもしれませんが、話し合いを進めるなかで、実は「子どもの気持ちを理解すること」の方が重要だと気づくかもしれませんし、「子育てが大変だという気持ちを夫に打ち明けること」の方が重要だと気づくかもしれません。解決の中身が何になるかはわかりませんが、話し合いの末にたどり着いた結論であれば、それはきっと納得のいくものだと思います。
カウンセラーはどんな人?
(1)資格を持っている(臨床心理士、公認心理師、精神科医)
カウンセリングの担当者を『カウンセラー』と呼びます。主に『臨床心理士』『公認心理師』の有資格者です。臨床心理士は1988年から認定されている民間資格になります。指定を受けた大学院を修了し、資格試験に合格することが条件となります。一方公認心理師は2019年から始まった心理職初の国家資格になります。この2つは活動内容がほとんど被っているため、今のところ「ほぼ同じもの」と考えて誤解はないかと思われます。また場所によっては精神科医がカウンセリングを行っていることもありますが、基本的に医師は忙しいため非常に稀です。
(2)カウンセラーは選べることもある
相談者はカウンセラーを指定できない場合が多いですが、性別や年齢など、大まかな希望を聞いてもらえる場合はあります。例えば、男性からDVを受けていた女性がその内容を男性に話すのは抵抗がありますよね。人員的な都合がつかなかったり、相談機関の考えもありますので、これは一概にどうとは言えません。必要な方は事前に相談してみてください。
Column:気を付けた方がいいこと
世の中には様々な肩書きのカウンセラーが存在します。例えば『産業カウンセラー』『精神保健福祉士』などの資格を持っている方もいますし、 ”〇〇カウンセラー” と自称している方もいます。それぞれトレーニングの過程や、定められた倫理規約、扱える技法も異なるため、相談者が求めるものと提供されるものとがマッチしているかの見極めが重要です。心配なときは、資格名を訪ねてみるのもいいかもしれません。
ただ、多くの資格は通信教育などで簡単にとれるようなものが多く、実際には中身が伴わないことも多くあります。 ”相談” であれば、相談したい知識を持っている人にするといいでしょう。カウンセリングであれば、現在の状況で信用できるのは、 ”臨床心理士と公認心理士の両方の資格を持っている人” かと思います。詳細については、また別の記事でお伝えできればと思います。
どこで受けられる?
一般的に辿り着けるのは、主に5つかと思われます。(1)病院、(2)教育機関、(3)会社の福利厚生、(4)相談所、(5)フリーのカウンセラー。それぞれの特徴も踏まえて紹介していきます。
(1)病院(主に精神科・心療内科)
精神科や心療内科では、医師や臨床心理士が治療の一環としてカウンセリングを行っている場合があります。流れとして、まず医師の診察を受け、医師の判断でカウンセリングを勧められる……というのが一般的です。
◆特徴
医師とカウンセラーとの連携がとれており定期的に診察も受けられるため、うつ病などの診断がある方でも安心。ソーシャルワーカーがいれば、社会資源(復職支援など)や福祉制度の情報も得られる。誰でも利用できるが、カウンセリング自体は保険適用でない場合が多いので、料金が比較的高い。
(2)教育機関(中/高のスクールカウンセラー、大学の学生相談室)
中学や高校にスクールカウンセラー(以下SC)がいれば、生徒は無料で利用出来ます。中学/高校では2001年からSCの配備が開始されましたが、公立校の場合その費用は自治体が賄っているため、地域による充実度の差が大きいのが現状です。大学では、ほぼ全ての学校で学生相談室が用意されていると思われます。
◆特徴
進学や学校の制度(単位など)に詳しいカウンセラーが多い。中学/高校の場合、全校生徒数に対するカウンセラーの数が少なく、さらに非常勤で毎日はいないこともあるため、気軽に相談できないこともある。
(3)会社の福利厚生(社内カウンセラーやEAP)
企業では福利厚生の一環として、社員がカウンセリングなどのサービスを受けられる場合があります。自前で用意されている場合もありますが、企業がEAP(Employee Assistance Program)と呼ばれる会社と契約していることもあります。私の知るEAPでは、利用対象は “社員とその家族(一親等)” となっており、相談の形態としては、メール/電話/面接と忙しいビジネスシーンに合わせた柔軟な対応がなされていました。最近では、2015年から始まった『ストレスチェック制度』の結果を鑑みて、会社の方から受診やカウンセリングを勧められる場合もあるようです。
◆特徴
教育・医療・産業など広範な知識を備えた熟練したカウンセラーが多い。
※ストレスチェック制度
一定の従業員を抱える会社が、定期的に従業員のメンタルヘルスをチェックし、必要であればそのケアを行うという制度です。
(4)相談所(①大学所属の心理教育相談所・②私設の相談所・③公的な相談所)
相談所といっても、場所により内容が大きく異なるため、更に3つに分けて解説します。
①大学の心理教育相談所
臨床心理士になるためには、資格認定協会の指定を受けた大学院を修了する必要があります。そのため指定を受けた大学院には院生が訓練するための相談所が地域に開かれており、所定の金額を支払えば誰でも利用できます。ちなみに大学生が使える “学生相談室” と、一般の方が使える “心理教育相談所” は同じ敷地内にあっても別物です。
◆特徴
経験の少ない大学院生がカウンセラーなので値段が安い。1年ごとにカウンセラーの顔ぶれが入れ替わる。
※SV(スーパーバイズ)
教育の一環として、自分が担当しているケースについて、熟練のカウンセラーに指導を受けることが定められています。ですから、カウンセラーが未熟であっても、仕組みとしては安心できるものになっています。
②私設の相談所
心理士が個人で開業している相談所もあります。開業するほどですから、どこかの大学で教えていた熟練者などが運営している場合が多いです。
◆特徴
熟練した心理士が多く、設備もカウンセリングに特化している(様々な心理療法の設備が整っていたりする)。ほぼカウンセリングの料金のみで運営費用を賄うため高額になりがち。
③公的な相談所
市区町村の教育相談所や、いのちの電話、地域活動支援センターや地域包括支援センターなど様々な機関があります。こういった機関で行われるサービスは、厳密に言うとカウンセリングではない場合もあります。地域のセンターであれば、精神保健福祉士や社会福祉士などが、 “相談” という枠組みで話を聞いてくれたりします。最近は、ニーズに合わせてメールやSNS、電話、訪問を行っているところも増えています。
◆特徴
地域の社会資源情報が豊富で、 “つなげる” 力が強い。一定の条件を満たした住民であれば無料で使えることが多い。一方、運営母体により特色が偏りがち。
(5)フリーのカウンセラー
コロナ以降、場所を問わずオンラインでサービスを提供してくれる専門家も増えてきています。試しに「カウンセリング」「オンライン」で検索をしてみると、「cotree」「うららか相談室」「Unlace」「ココロの窓口」「かもみーる」などのサイトがヒットしました。こういったサービスでは、登録しているカウンセラーと相談者をマッチしてくれるみたいですね。副業のカウンセラーも多く在籍していると思います。
Column オンラインカウンセリングの裏話
これに関する裏話ですが、オンラインサービスが普及している背景には、コロナ以外にももう一つの要因があるように思います。それは、「国家資格である公認心理士の誕生により生まれた、たくさんの資格保持者の活用」です。これはまた別の記事に書こうと思いますが、公認心理士は、これからの社会で活躍できる信頼できる国家資格として誕生したものの、誕生までの様々な動きにより、実際には資格保持者の質のバラつきが大きく、資格を有しているというだけでは信頼できないものになっています。こういった経緯から、「資格はとったけど、それを活かして働く道がない」という方も多くおり、ニーズをうまく活用した商売だと思います。
誰かと一緒に受けることはできる?
カウンセリングの場では 1 対 1 で面接が進みます。親子でいらっしゃる方のなかには、「子どもの面接に同席したい」「子どもが何を話したか知りたい」と仰る親御さんがいます。しかし、日常とは隔絶された空間で、身近な知り合いには話せない本音を安心して話してもらうのがカウンセリングですから、相談者とカウンセラー以外の第三者が同席することはないのです。
ただ例外はあります。『Mr. & Mrs. スミス』という映画をご存知でしょうか。ブラッドピット演じるジョンと、アンジェリーナジョリー演じるジェーンが夫婦でカウンセリングを受けるのですが、これをカップルセラピーといいます。
日本での認知度は低いですが、夫婦間の問題はコミュニケーションの齟齬から起こる場合が多く、このコミュニケーションの齟齬もカウンセリングで扱うため、夫婦で受けることが可能なのです。一方で親子の場合は、親と子に別々のカウンセラーがつき、同時並行で面接が行われる場合が一般的です。
値段について
値段の相場を参考程度に載せておきます。(東京都内:1セッション50分~1時間を目安とする)
・大学の心理教育相談所……\2,000~\3,000
・病院のカウンセリング……\5,000~\8,000
・私設相談所……\8,000~\12,000
正直、高いですよね(笑)。一度ならいざ知らず、通うとなれば出費は小さくありません。臨床心理士は大学院で専門知識を修めた人間ですから安くはありませんし、病院では保険が適用されない場合が多かったり、私設の相談所ともなれば、施設の維持費などで費用が嵩むこともあり値段は高くなってしまうのです。
値段を高くすることで、1回1回の面接に真剣に臨めるというメリットがあります。私が学生時代に受けた講義では、「無料カウンセリングは、相談者・カウンセラーともに “無料” という部分に甘えてしまい、うまくいかない場合が多い」と説明を受けました。一方、カウンセリングを受けたいと思っている方は経済的に困窮していたり、既に医療費が嵩んでおり出費を抑えたいという方も多いと思います。
個人的には「高くて相談を諦めてしまうくらいなら、安くてもいいから来て欲しい」という気持ちがあります。一番重要なのは、値段よりもカウンセラーとの相性であったり、クライアントの納得感であったりするのですが、気になる方はぜひ自分が納得できる値段の相談機関を見つけてみてください。
『枠組み』について
カウンセリングルームは、プライバシー保護のためにあまり大々的には公開されませんから、設備・仕組みともにどんな構造かが分かりませんよね。物理的な設備やルール、時間の区切り方、倫理規約などの構造をまとめて、 “枠組み” と表現しますが、カウンセリングではこの枠組みを非常に大切にしています。「枠組みが粗雑なところは信用できない」と言っても過言ではないと思います。
(1)場所
カウンセリングルームは人目につきにくい場所によくあります。相談に来る姿を見られたくない方も多いでしょうし、周囲が騒がしいと落ち着いて話せないためです。待合室ですら、他の相談者と顔を合わせないよう配慮されているところもあります。
(2)時間
基本的には、50分(+次回の予約など10分)で1回分の枠にしているところがほとんどです。長すぎると、相談者・カウンセラー共に疲れてしまい、本来話さなくていいことまで話してしまいますし、短すぎると本題に入る前に時間が来たり、焦ってしまい落ち着いて自分と向き合えない場合もあります。30分で1回分の枠を設定しているところもあるようです。
(3)倫理
臨床心理士・公認心理師には厳しい倫理規約があり、守秘義務や、相談者との私的関係の禁止、などが決められています。カウンセラーは基本的に、カウンセリングルーム以外では相談者と会いません。
準備することはある?
基本的には構えず来所していただけますが、話す内容はある程度考えておいた方がいいかもしれません。カウンセリングの場で話すのは基本的には相談者なので、話すことがないとお互いに困ってしまうかもしれません。ただ、話をするのが苦手な方もいるでしょうから、そういうときはカウンセラーを頼ってみてください。
カウンセリングはその面接の中だけで終結するのではなく、次の面接までの間の「日常生活での気づきや実践」にも意味があります。2回目以降はそういった話がテーマになってくることも多いです。カウンセラーが扱う技法(認知行動療法)によっては宿題が出る場合もあり、それをテーマとしてセッションが進むこともあります。
やめたいときはどうしたらいい?
相談者には自由に始める/やめる権利があります。基本的に、相談者が「必要ない」と思ったときが終了のタイミングです。
一方、カウンセリングが必要と分かっていても「行きたくない」「サボってしまおう」と思ってしまう場合は意味合いが異なってきます。これは、何らかの理由でカウンセラーと会うことや面接が進展することに抵抗を感じているためであり、そのこと自体が、実は対人関係における重要なテーマであったりします。
特に精神分析では、料金を事前に徴収して、1回分の枠組みを「休むという選択をした」とみなし、枠組みの維持を大切にすることもあります。こういうときは、「行かない理由」を素直に打ち明けてみると思わぬ進展があるかもしれません。
カウンセリングに対する誤解
昔、ある方が「カウンセリングは、相談者を自分に依存させて離れられなくしてしまうものだ」と話していたことがありました。それを聞いて、「カウンセリングが何かを正確に理解している人は少ないだろうから、そういう誤解を与えてしまうのも無理はないことだ」と感じたのを覚えています。学生時代に先生から聞いた話をアレンジして、私なりの比喩で説明してみようと思います。
まず、川に溺れている人がいたとします。これは相談者です。カウンセラーは、これを岸の上から見ています。相談者は「引き上げてくれ!」と頼みます。ここからカウンセリングが始まるわけですね。ところが、相談者がよほど命に係わる危機にでもない限り、カウンセラーはすぐに引き上げることはしません。時には一緒に川につかり、水の冷たさや苦しさを一緒に感じながら、どうしたら泳げるようになるか、または浮けるようになるかを一緒に考えます。その際、やり方を知っていたとしてもただ教えることはしません。なぜなら、カウンセラーが目指しているのは、 ”困難を乗り越えることによる相談者の成長” だからです。
だからといって、独力では寂しさや苦しみに立ち向かえなかったり、どうしていいか途方に暮れてしまったりします。ですからカウンセラーは、傍で励ましたり、思いを共有したり、考えを整理したりして、それを援助します。時には、考えるためのヒントを提供することもあります。こういったやりとりを通して、相談者は自分で困難を乗り越える力を身に着け、やがてカウンセラーは必要なくなるわけです。
最後に
私自身、人に相談することが苦手で、「相手に迷惑をかけてしまう」「相談するなんて、自分は弱い人間だ」と思ってしまうことがよくありました。今でも苦手(笑)ですが、相談することでもやもやした心がすっきりしたり、自分の考えを再確認できるというのは実感しています。
私は「相談できる人は、とても勇気のある人」だと思っています。というのも、相談するためには「自分には課題がある」と認めることが必要で、「それをどうにかしたい」と行動に移すことが必要だからです。課題と向き合うのも、行動するのも、多大な勇気を必要とします。私たちは、いつでもみなさんをお待ちしています。うまく言葉にならなくてもかまいません。その気持ちを、一緒に考えさせていただければと思います。
また最後に、カウンセリングは本人が納得して「受けてみよう」と思えることが大切ということをお伝えします。周囲が無理やり連れて行っても、本人に納得感がない状態ではうまくいきません。むしろ「嫌がっているのに無理やり連れていかれた」と、周囲との関係が悪化する可能性があります。そういうときは、まず当事者を支援できる方(不登校で悩んでいるお子さんであれば、そのご家族)がカウンセリングを受けてみてください。きっと、新しい発見があるはずですし、安心感につながるはずです。
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